バッドジンクス×シュガーラバー
不穏すぎる返答に思わず息を呑んですくみ上がった。

『吐きさえすれば』って、何その不安しかわかないセリフ……。

ささやかな抵抗もむなしく、連れて来られたのは異動初日にも同じようなシチュエーションで訪れたミーティングルームだ。

私を先に通してから室内に入った部長がカチャリと鍵をかける音が耳に届き、絶望的な気分になる。

今日は、前回と違って私に椅子を勧めることもない。

久浦部長はまるで退路を塞ぐようにドアに背を寄りかからせながら、両腕を組んだ。



「──で。帰りの車からずっと、そこまであからさまに俺を避けるのは、一体どういう了見だ?」



鋭い視線を正面から受けることができず、私は目を泳がせる。

小さくため息を吐いて、久浦部長がドアから身体を起こした。

1歩こちらに踏み出したのがわかって肩をはねさせると、気づいた部長はそれ以上近づいてこない。



「そんなに怖いか、俺が」

「……っこ、こわいと、いうか……」



怒りなどは感じられない、あまりにも静かな声だったので、とっさに言葉が出た。

自分でも、これ以上はなんと言えばいいのかわからない。

顔は上げられないけれど、久浦部長が戸惑っているのが雰囲気で伝わる。
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