バッドジンクス×シュガーラバー
……もう、黙っているわけにはいかないみたいだ。

ゴクンと唾を飲み込んだ私は、意を決して口を開いた。



「久浦部長には……ジンクスって、ありますか?」

「は? ジンクス?」



明らかに困惑した声音で、部長が聞き返してくる。

当然の反応だ。震えそうになる指先を包むように胸の前で両手を合わせ、話を続けた。



「私には、あるんです。しかもこれは即効性があって効果も強いうえ、私だけの問題じゃなくヒトに迷惑をかけるもので……」

「なんだ、その『ジンクス』って」



半信半疑といった様子の部長がすかさず訊ねてくる。

一度ためらってから、私は観念して答えた。



「昔から……私とかかわった男の人はみんな、当日か翌日に何かしらの不幸な目に遭うんです」



少しの間、静寂が場を包んだ。

私が2回まばたきをしたタイミングで、久浦部長が「はあ?」と気の抜けた声を漏らす。



「なんだそれ。そんなことが……」

「あるんです。昔から──それこそ、子どもの頃から……っ公園で私と遊んだあと高熱を出して寝込んだり、一緒の委員会活動をした帰り道で、交通事故に遭ったり……!」



思わず顔を上げて言い募るこちらの剣幕に驚いたのか、部長が目を丸くして口をつぐんだ。
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