バッドジンクス×シュガーラバー
脳裏に浮かぶのは、これまで何度も向けられてきた、決して好意的とはいえない眼差しの数々。



『ユウタくんすっごい熱があって学校お休みなんだって。かわいそう』

『憂依ちゃん昨日公園で会ったって言ってたよね。そのときは大丈夫そうだったの?』

『ねぇねぇ! カズトくん昨日の学校帰りに車に轢かれて入院したって聞いた?!』

『あ、憂依ちゃん委員会一緒だったんだっけ? 帰るのは別々で助かったね』

『なんか、ユウタくんもカズトくんも……憂依ちゃんと仲良くしたら、良くないことが起きたみたい』

『あ! そういえば俺、こないだ小糸と日直やった日に自転車で転んで捻挫したよ』

『えーほんとに? 憂依ちゃんこわーい、何か呪いとかかけてるの?』



小学校3年の頃。たぶん最初に言ったあの子は、単なる思いつきを口にしただけだったのかもしれない。

だけど、それからどんどん、話は大きく広がって……私は、男女問わずそれまで友達だったクラスメイトからも、遠巻きにされるようになった。

ただの気のせいだと、笑って返せればよかったのに。考えてみるとたしかに、彼らの言ったことに矛盾や間違いはなくて。

そのうち、どうやら私のこの“体質”は異性に対してのみ発動するらしいと誰かが気づき、女の子たちは控えめながら前よりも普通に話しかけてくれるようになった。

だけど男の子はあからさまに私を避けていたし、こちらも極力かかわらないようにするのは変わらない。

高校は誰も自分を知る人がいない地元から離れた女子校に進学し、ひっそり息をひそめるように地味な学校生活を過ごした。
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