バッドジンクス×シュガーラバー
3:久浦佑の強運×甘い期待
「んー、こっちはちょっとプリンが甘すぎるわね」
「あ、これは口の中でクリームと合わさったときの一体感がいいな。けどトッピングの果肉が酸味強すぎか?」
目の前のテーブルにずらりと並んだサンプルをひとつずつ試食し、えみりさんと牧野さんが各々の感想を言い合う。
彼女たちにとっては何気ないやり取りでも、商品開発初心者の私には勉強になることばかりだ。
ふたりの話に耳を傾けながら、私も手にした容器の中身をスプーンですくい上げてパクリと口に入れた。
えみりさんと牧野さん、そして私の3人が今いるここは、社内にあるテストキッチン──通称ラボ。
今日は午後からこの場所に集まり、協力工場のパティシエさんに作ってもらったサンプルの確認をしていた。
コズミック・マインドは、スイーツだけでも週に2~3種類、年間にすれば約120種類ほどの新商品を発売している。
開発担当のグループ内では常時何品かの商品を開発・試作していて、私も異動してから頻繁にサンプルの試食に駆り出されていた。
「憂依ちゃん、どう?」
「そうですね……これは口どけはいいですが、甘ったるさが舌に残る感じがします」
「あー、たしかに」
私が持つ容器の中身を横からひとすくい攫い、実食した牧野さんが肯定してくれる。
不意打ちの近さに思わずビクリと身体を揺らしそうになってしまったけれど、なんとか耐えた。