バッドジンクス×シュガーラバー
無言で返事をすることができないまま──目が、離せない。



「……そんなに熱い眼差しを向けられると、勘違いしそうになるんだが」



色気を感じる低い声がそんなことをつぶやいて、私はぼうっとする中でも僅かに思考をめぐらせる。

……『勘違い』? 勘違いって、どういうことだろう。

イタズラっぽく私の頬をつまんでいたはずの手が、今度はどこか艶かしい動きですりっと耳の後ろを撫でた。

そうされて初めて、肩を揺らし我に返る。



「ひゃ……っああああの部長、もう離れてください! 危ないので!」

「何を今さら。俺には効かないって証明しただろうが」

「ダメ! です!!」



ブンブンと顔を横に振って必死で訴えると、小さく舌打ちした久浦部長が私から手を引きながら身体を起こした。

やっぱりガラ悪い……と思いつつも鼓動がうるさい胸もとに手をあて、大きく息を吐く。

なんなの、一体。久浦部長、何から何まで心臓に悪すぎる……。

動揺しまくりの心を落ちつかせようと、メガネのズレを直してから深呼吸を繰り返す。
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