バッドジンクス×シュガーラバー
そんな私を黙って見下ろしていた部長が、腕を組んで壁に背中をもたれさせた。



「そもそも本当に、かかわった男を不幸にするなんて体質あるのか? 今までいろいろ起きたと言っていたが、全部おまえはまったくの無関係で、ただの偶然ってことは……」

「偶然じゃないです!!」



ここに来て私が出した1番大きな声に、久浦部長が息を呑む。

カッと頭に血を上らせ、感情的になったその勢いのまま言葉を続けた。



「ダメなんです、本当に……っも、もう、お父さんみたいな人は、出したくない……っ」



おさまっていたはずの涙がまたにじんで、あっという間にこぼれ落ちる。

こんな話はするべきじゃないのに、涙とともに口から出る悲痛な声が、どうにも止まらなかった。

こうやって自分から“あのとき”の話をしてしまったことなんて、今までない。

けれどなぜだか私は、久浦部長を前にすると──これまでずっとそうしてきたように、頑なな自分でいられなくなってしまう。

誰にも触れられたくない。触れないで欲しい。

そうやって殻の中に閉じ込もってばかりいる自分を、なぜかこの人には、引きずり出されてしまうのだ。



「……父親に、何かあったのか?」



泣きじゃくる私を前に真剣な表情をした久浦部長が、静かな声で問う。

視線を床に落とし、ギュッと眉間に力を込めながら震える唇を開いた。
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