バッドジンクス×シュガーラバー
頭を抱えたままブンブンと首を横に振って、久浦部長の言葉を否定した。



「突拍子もない話だってことは、自分でもわかってます……だから部長がおもしろがって、あんな……き、キスとか、したのも」



それでも、何の気持ちも込められていなくたって、“私に接触した”という事実は変わらない。

今目の前にいるこの人が無事だったのは、きっとただの偶然だ。これから先のかかわり方次第では、今度こそ久浦部長にも大きな不幸を呼び寄せてしまうだろう。

できる限りの予防線を張らないと、私はまた繰り返す。

どんどん、自分のことが嫌いになってしまう。



「……小糸」



不意に名前を呼ばれ、うつむいたままハッとまぶたを開けた。

ゆっくりと久浦部長が近づいてくるのがわかるのに、身体が強ばっていて動けない。

とうとう、床を見つめる私の視界に革靴のつま先が現れ、そこで立ち止まった。



「悪かった。おもしろがったつもりはないが、おまえの気持ちを考えずにあんなことをしたのは、軽率だった」

「……え」
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