バッドジンクス×シュガーラバー
「うーん、相変わらず侑子さまは目の保養……」

「なに言ってんの。それより、どう? 異動後1日目の感触は」



癒されつつうどんをすすっていた私に、侑子のちょっとハスキーな色っぽい声が飛ぶ。

う、と声を詰まらせて、視線をどんぶりの中に落とした。



「……男の人、が、多いです」

「まあ、そりゃそうよね。広報室がちょっと特殊だっただけだし」



侑子は知っている。私のこの、やっかいな“体質”のことを。

付け合せのコールスローサラダをパクパク食べながら、彼女はさらに続けた。



「仕方ないでしょ、こればっかりは。社会人として、同僚の男とそれなりに接するのは避けられないって」

「そ、れは、そうだけど……」

「憂依は、気にしすぎ。もしそれで相手に“何かあった”って、憂依は堂々として知らんぷりしてればいいのよ」

「でも、それじゃあ相手の人が……!」



少しだけ声を荒げ、バッと顔を上げる。

けれど静かに私を見つめる侑子と目が合った瞬間、言葉はのどの奥へと消えて。思わずまた、視線を落とした。



「……ま、くれぐれも無理はしないようにね。私は憂依が傷つくことにならないか、それだけが心配だから」

「侑子……」



普段はクールな彼女のあたたかいセリフに、うるっと涙腺が緩む。

感動しきっている私を見てちょっとだけ口もとに笑みを浮かべながら、侑子は「ほら、早く食べないと冷めるよ」と言って、どんぶりを視線で示した。

……えへへ。わかりにくいけど優しいんだ、この超絶美人な同期は。



「侑子さま、大好き~」

「はいはい、私もよ」



もはや恒例になってしまった、そんな応酬をしながら。

私は先ほどまでより幾分前向きな気持ちで、サクリとかき揚げにかぶりついたのだった。
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