バッドジンクス×シュガーラバー
そしてまた、午後の業務が始まる。



「あ、小糸さん」



ビクゥッ!!、なんて効果音が目に見えそうなくらい過剰に肩をはねさせて、私はおそるおそる右隣へと視線を向けた。



「な、なんですか……?」



ボソボソと返す私の目の前に、隣の席の牧野さんが何枚かの書類を差し出す。



「悪いんだけど、これデータ入力やっといてもらえる? そんなに難しくないやつだから」

「わ、わかりました」



小さくうなずいてそろそろと手を伸ばし、書類を受け取った。

私の様子を見ていた牧野さんが、少しだけ苦笑する。



「えーっと。俺のこと、こわいかな? それともまだ緊張してる?」

「へ……っや、あの、だだ、大丈夫です……っ」

「……大丈夫そうには、見えないんだけどなー」



ますます苦く笑いながら、牧野さんはまた自分のパソコンへと向き直る。

そのタイミングで、今度は私の左隣から淡々と声が飛んできた。



「嫌われてるんじゃない? 牧野くん」

「ッえ?!」

「あ、ところで小糸さんさー」



切れ味抜群なひとことを投下しておきながらも、その言葉に激しく衝撃を受ける牧野さんはあっさりスルーした浅村さんが、軽い調子で私に話しかける。
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