俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
大きな窓にはめ込まれたエレガントなステンドグラス。
天井から吊るされているのは、蝋燭をモチーフとした煌びやかなシャンデリア。
デスクや棚は全て茶色で統一されていて、白い壁に囲まれたアトリエは小さな教会という印象だ。
何より、デスクの横に立つマネキンが纏う真っ白なウェディングドレスが、教会に似た雰囲気をさらに際立たせている。
紬花は吸い寄せられるように、ウェディングドレスへと足を向けた。
眩く艶やかなデザインのドレスは美しく、つい見入ってしまう。
「これ、御子柴さんが作ったドレスですよね?」
「ああ」
やはりそうかと、紬花はうっとりと目を細めた。
陽のデザインするドレスには、見る者を魅了する高い技術と気品、そして洗練さがある。
それは紬花がデザイナーを目指すきっかけとなった、とあるドレスにも共通していた。
だからこそ、紬花はエトワールで働きたいと強く思い、扉を叩いたのだから。
エトワールはオーダードレスのみではなく、レンタルドレスや販売ドレスも扱っているブライダルハウスだ。
オーダードレスはクライアントからイメージを聞きデザインを決めていくのだが、店頭に並んでいるドレスはドレスデザイナーがデザインしたものが並んでいる。
エトワールの創設者である陽の祖母が現役であった頃は、全てのドレスを陽の祖母がデザインしていた。
ボディーラインを美しく魅せる様々なシルエットのドレスたちは、世界一の花嫁に仕上げてくれると評判だ。
そして現在、陽の祖母は引退しており、経営については陽の兄に、デザインは祖母譲りの才能溢れる陽に任せている。