俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「やっばり素敵ですね、御子柴さんのデザインしたドレス」
「なんだ急に」
「急じゃないですよ。私は、エトワールのドレスが好きなんですって、面接の時にも言ったじゃないですか」
「そうだったか?」
本当は覚えていたが、素直にありがとうとは言えずに陽は紬花から視線を逸らした。
「あ! ここで何かお手伝いすることはありますか?」
「ないな」
「そうなんですね。じゃあ、お掃除でもしますね!」
本日水曜日はエトワールの定休だ。
ハウスキーパーが訪れるのは月曜日と木曜日だと先ほど陽が教えてくれたのを思い出した紬花は、月曜日から二日後の今日ならば多少は汚れているはずとふんだ。
掃除をする気満々でアトリエから出た紬花は、リビングに置いたスーツケースに手をかける。
「というか、スーツケースに何を入れてきたんだ」
世話をするにしても、掃除なら陽の家にあるものを使えばいい。
スーツケースに入れるほどの荷物が必要なのかと陽が首を傾げて問うと、紬花は持参したエプロンを取り出して「色々ですよ」と答えた。
「数日分の着替えと化粧品に、あとは……あ! 仕事道具も忘れずに持ってきました!」
「待て待て待て。お前まさか泊まる気か?」
「もちろんですよー! じゃないとお世話できないじゃないですか」