俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
陽の家は、ハウスキーパーのしっかりとした仕事のおかげでさほど汚れてはいなかった。
自分で料理をしないらしく、キッチンはコーヒーカップ以外洗うものもなく綺麗で、すぐにやることがなくなってしまった。
(あとできることと言えば……夕飯作りね!)
窓の外はまだ明るく澄んだ冬の青空が広がっている。
紬花は、リビングのソファーで様々な雑誌を広げている陽を見た。
「御子柴さん、晩御飯は何が食べたいですか?」
「悪いが、俺はあまり夕飯は食べないんだ」
雑誌に視線を落としたまま答えた陽。
それは、紬花に世話を諦めさせるという魂胆から出た言葉ではなく、本当のこと。
「ええっ? じゃあお昼ご飯食べたら朝まで食べないんですか?」
「いや、つまむ程度のものと酒を少し飲んでる」
元々食の細い陽は、朝食にパンとチーズやハム、フルーツ等を摂り、昼食は14時過ぎと遅めの時間にエトワールのスタッフらと近くのカフェやレストランで済ませている。
その為、帰宅時にはまだあまりお腹が空いておらず、夕飯は陽の好きな白ワインに合うようなつまみを用意して食べるだけだ。