俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
日本のみならず世界中に愛されるブライダルハウス【エトワール】。
創業者一族の御曹司という肩書に囚われずに陽と接する者は少ない。
出会ってから今日まで、こびへつらうことなく友人として気さくに接してくれるパタンナーのあゆみは、陽にとってありがたい存在だ。
そして、臆することなくニコニコと陽を見つめている紬花も、陽を御曹司ではなく純粋にエトワールのデザイナーとして見ており、四月の入社以来、アシスタントデザイナーとして日々頑張っている。
そう、頑張っているのだが、その頑張りが災いして、陽の右腕が負傷する結果となったのだ。
もちろんわざとではなく、事故だ。
だからこそ陽は恨んでもいないし、紬花の手を借りることなど考えてもいなかった。
しかし、本来なら自分だけが怪我をするはずだった紬花としては、何もせずにはいられず、断られても首を縦に振るまで食い下がるつもりで、陽の住居情報をあゆみから仕入れ、こうしておしかけたのだ。
紬花は、自分に呆れた眼差しを向ける上司の右腕に視線を移す。