俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
一方、陽も自分の傍らで両手両膝をつき湯に濡れていく紬花の姿に言葉を失っていた。
湯を吸って肌に貼りついた白いTシャツの下に浮かんだ下着のシルエット。
慌てて視線を逸らした先には、細い腰からなだらかに膨らむヒップライン。
再会を熱望していた相手が、眉尻を下げ、頬を赤く染めて自分を見下ろしているという状況に、強烈な欲が胸の内に生まれ埋め尽くしていく。
次いで、脳裏に掠めたのはあゆみの言葉。
『初恋の君、なんでしょ? これを機に初恋、叶えちゃいなさいよ』
確かに、会いたいと願っていた相手だ。
紬花がエトワールを訪れた時も、奇跡が起こったのだと密かに喜んだ。
けれど、紬花は陽のことを覚えてはいない様子を見せた。
紬花にとって、自分という存在は重要ではなかったのだと突きつけられ、少なからず傷ついたがもういい大人だ。
恋愛感情に振り回されるほど青くはない。
覚えていないのならそれでいいと、育てるべき人材として接していくつもりだった。
……そう、つもりだったのだが。
(結局、欲しいのか、俺は)