俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
ようやく会えた。
だのに、自分ではない誰かに心を寄せ、自分ではない誰かに愛を囁くのを許せるのか。
何もせず、ただ見送ることができるのか。
まだ訪れてもいない未来を想像し、醜い嫉妬心が「それならばいっそ自分のものにしてしまえばいい」と、陽の理性をかどわかそうとする。
──抗うか否か。
見つめる先、紬花の瞳が羞恥に揺れ、耐えきれなくなり陽から視線を離す。
その視線をもう一度自分へと戻したいという欲求が生まれ、陽は起き上がろうとした紬花の腕を掴んだ。
再びバランスを崩し、陽の身体に倒れ込んだ紬花が慌てて頭を上げる。
「み、みこ」
御子柴さん?と、名を紡ごうとした声は陽の唇に塞がれ奪われた。
驚き動揺する紬花が後ろへと身じろぐが、逃がさないと告げるかの如く、紬花の濡れた頭の後ろに陽は大きな手を添えた。
「まっ……て、み、こしばさ」
「これは罰だ」
吐息交じりの言葉に、紬花は困惑する。
罰とは一体何のことか。
またアクシデントを起こしたことか、はたまたきちんと世話ができていないことか。
しかし、あれこれと考える暇もなくまた唇を重ねられ、絶え間なく続くシャワーの音にリップ音が紛れる。