俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「和をテーマにしたドレス、とのことでよろしかったですか?」
予約した時刻より十分ほど早く来店したクライアント、長谷川まどかは、紬花の確認に笑みを浮かべ頷いた。
「ええ、私も彼も和風のものが大好きなんです。だけど、式は両家両親の希望もあって教会式にすることになって」
「なるほど。それで、ウェディングドレスのテーマを和に」
「はい。披露宴のお色直しで打ち掛けを…とも考えたんですけど、式場のプランナーさんに相談したら、和装は着替えに時間がかかると聞いたので……それなら着物に拘らず、ゲストの方たちと一緒に過ごす時間を優先したいなと思ったんです」
結婚式ではスピーチやケーキカット、余興の他、さらにビデオ上映などのイベントを盛り込んだ場合、新郎新婦とゲストが触れ合う時間はあまりない。
お色直し後もすぐにゲストの前に登場するわけではなく、裏では写真撮影などが行われているのだ。
プランナーから一通りの流れを聞いた長谷川は、新郎と相談し、ビデオ上映などのイベントは行わないことにしたと紬花に告げた。
また、お色直しもしないのだと。