俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「恥ずかしながら、予算が厳しくて。お色直し用のドレスをレンタルするなら、予算内で好みのウェディングドレスを作って着る方が素敵な思い出になると思ったんです」
「そうなのですね。お色直しはせず、ヘアスタイルとブーケを換えて雰囲気を変える方もいらっしゃいますよ。あとは、ツーウェイスタイルのウェディングドレスにするという手もあります」
紬花は、長谷川に少し待っててもらうように声掛けすると、店内に飾られているレンタル用のウェディングドレスの中から一着選んで持ってきて見せる。
「こちらのドレスはデザイナーの御子柴が、ハワイで挙式するという新婦様のご要望でデザインしたものなんですけど、このオーバードレスを外すとシンプルなAラインのドレスになるんです」
柔らかな素材が広がるバックリボン付きのオーバードレスを外して見せると、長谷川は瞳を輝かせた。
「印象がガラリと変わるんですね!」
「はい! オーバードレス着用時はキュートな印象ですが、Aラインだと大人っぽく落ち着いた印象になりますよね」
「そうか……ツーウェイという手もあるんですね……」
呟いて、長谷川がドレスに触れた時だ。
「遅れて申し訳ありません。デザイナーの御子柴と申します」
押していた会議を抜け出して店舗に顔を出した陽が、長谷川に綺麗な所作でお辞儀をし、「片手ですみません」と続けながら名刺を手渡す。