俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない

コーヒーでも淹れてひと息つこうとリビングに入った陽は、フローリングに座り、ガラスのローテーブルに突っ伏して眠る紬花を見つけ、そっと近づき様子を伺う。

紬花の傍らにはデザインノートが数冊置かれており、散らばっている数枚の紙には和をテーマにしたウェディングドレスのデザインが描かれていた。


(長谷川さんのか……)


今回のドレスデザインは紬花に任せてはいない。

手の使えない陽が紬花にアイデアを伝えてデザイン画を作成する予定だ。

しかし、採用されずとも自らのアイデアを吐き出して勉強しているのがわかり、陽はそっと微笑する。

その直後、ふと目に留まったものに小首を傾げる。


(これは……写真?)


スタイル画の間に挟まれた写真。

資料のひとつかと、陽はなんとなく手に取ったのだが。


「……これ……は……」


そこに写されているウェディングドレスを見て、陽が驚き目を見張ったと同時、気配を感じ取った紬花の睫毛が震え、瞼がゆっくりと持ち上がる。
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