俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「お前、風呂やトイレまでついてくる気か」
「はい! あ、大丈夫ですよ! 私、年の離れた弟がいて、昔、怪我していた時にもお世話していたので慣れてますから」
「俺は成人だ」
「うちの弟ももうすぐ成人です! 月日が経つのは早いですよねぇ」
「お前は母親か」
「いえ、私は姉ですよ」
ツッコミだとわからず何を言っているんだとばかりに不思議そうに首を傾げた紬花に、陽はがっくりと肩を落としてうなだれる。
「……疲れる……もう好きにしてくれ……」
「ありがとうございます!」
噛み合わない会話と諦めない精神に負けた陽は、ここで話しているより、役に立てることがないというのをわからせた方が早そうだと考え、紬花を家の中へと招き入れた。
「お邪魔します」
挨拶と共に足を踏み入れた玄関は、白く光沢のあるタイルが広がっており、そこからリビングまで伸びる廊下は明るく清潔感に溢れている。
一面ガラスのお洒落なドアを押し開けると、キッチンを取り込んだ広々としたリビングが紬花を迎えた。