俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「初恋は叶わないなんて聞きますけど、叶っちゃいました」
はにかむ紬花の告白に、陽の眦が愛おしげに下がる。
切望していたものが、目の前にある現実に胸が締め付けられ、紬花はたまらず陽の腕の中に身を寄せた。
右腕が使えない陽は、左腕だけでしっかりと紬花を抱くと、耳元で囁く。
「俺も、お前が初恋なんだ」
えっ、と驚き、本当かと紡ぐはずだった声は陽の唇によって飲まれてしまった。
甘く食まれ、うっとりと目を閉じると口付けは少しずつ深さを増す。
自分が初恋であるという話しを詳しく聞きたい。
しかし今は叶いそうにもなく、息継ぎの合間に「紬花」と名を呼ばれてしまえば、疑問などあっという間に互いの熱に覆われ隠されてしまう。
ああ、溶けそうだ。
陽に与えられる情熱的な口付けに必死に答えながら、紬花は熱い吐息を漏らした。