俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
想いが通じ合ってからもうすぐ二カ月が経とうとしている紬花と陽の関係は、当然ながら恋人へと進展した。
クリスマスも共に過ごし、正月は紬花が二日ほど家に戻ったりもしたが、再び陽の家に向かう際はセコム親父に引き止められることもなく、順調にふたりの仲を深めている。
そして、三日前、陽の骨折は晴れて完治。
陽はすこぶる快適な生活へと戻っている。
「そういえばさ、ゆいちゃんはまだ御子柴君の家にいるの?」
「あ、はい。でも、そろそろ自分の家に戻ろうかと思ってます」
元々、自分の不注意で怪我をさせてしまい、せめて不自由な思いをさせまいと世話を買って出たのだ。
しかし、生活や仕事に問題がなくなった今、陽はもう紬花の手を借りる必要はない。
様子見としてまだ居候させてもらっているが、そろそろ家に戻るべき頃合いだろう。
「そのまま同棲しちゃえばいいのに」
「それはさすがに父に怒られそうで」
「あー…お父さんの壁があったか」
紬花もできることなら陽ともっと一緒にいたい。
けれど、つい先日、いい加減帰ってこいという連絡が父からあった。
父はまだ知らないままだ。
陽の家にいることも、陽と付き合っていることも。
(御子柴さんの家にいたことはさておき、恋人ができたってことは、いつかは言わないとだよね……)
そんな報告を受けたら父はどうなるのか。
腹を立てるだけでなく、頭に血が上って気絶するのではないか。
せめて交際することを反対しないでもらいたいと紬花は願い、ウェディングドレスの微調整を手伝った。