【完】今日もキミにドキドキが止まらない
ああ……。こんなことってあるのかな。
どこまでも真っ直ぐなその声は、私にはちゃんと聞こえたよ、工藤くん。
心がどんよりしていたのに、まるで虹が架かるように晴れていく。
泣いてしまいそうだ。
工藤くんの言葉はいつだって、私の心を掬ってくれるよね。
「帰るよ。これ以上は待たせたくないから」
「ま、待って!こんな台風の中、春川さんだってもう帰ってると思うの……っ」
「日野原って意外とバカ?」
「バカ……?わたしが……?」
「バカだよ。アイツは絶対そんなことしない。俺のこといつも待っててくれてんだよ。寒くても雨の日でも。俺にはわかるから」
ねぇ、工藤くん……。
いつも私のことを見ててくれてありがとう……。
今直接伝えられないけれど、私は心の中で呟いた。
これ以上、工藤くんの優しい声を聞いていたら、今度こそ溢れ出る涙を我慢出来そうにない。
滲む視界の中、私は静かにその場を離れた。