クズの間に生まれた子どもはクズなのか?
「ねえ、子どもが生まれたら早く駆け落ちしないと……。じゃないとさすがにこの関係がバレてしまうわ」

カフェで私が少しずつ大きくなり始めたお腹をさすりながら言うと、五十鈴くんは「それならちょうどいいタイミングなんだ」と力強く笑う。

「実は、俺の務めている会社がデンマークに支店を出すことになったんだ。俺にデンマークに行かないかっていう誘いがきてる。この子の予防接種を終えた後に駆け落ちしよう」

五十鈴くんはそう言った後、私のお腹を優しく撫でる。

「早く会いたいな」

「本当ね」

早く、愛する人との子どもに会いたい。私たちはそう思いながらお腹を撫で続けた。



そしてお腹はどんどん大きくなり、私は出産をした。元気な男の子だ。病院ではなく自宅で産んだ。

初めての出産だったのに、将吾は「出張」と言ってそばにはいなかった。妹のところに行ったんだろう。嘘だってわかってる。

「おめでとうございます!元気な男の子です」

助産師さんが、小さな生まれたての命を私に見せる。可愛い男の子。五十鈴くんより私に似ているかもしれない。
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