こいつらといる数年より あいつといた一瞬が 輝いているのはなぜだろう
 どうするべきか分からない。僕自身、どうしたいのかも分からない。そんな僕の心情を知らないあいつと今日も一緒に学校へ行く。
 清々しい青空が広がる下で、手を大きく振るあいつが見える。
「おはよ」
たった一言。ただの挨拶なのに、あいつが言うだけでとても素敵な言葉に聞こえるのは何故だろう?
 僕は今まで通り、「普通であること」を意識しながら挨拶を返した。
 気が緩むと、すぐに顔に出てしまうから、こいつといる時はいつも気を張ってしまう。
 いつも通り。何も変わらず。悟られず。
…でも、こんないつも通りの日常が、代わり映えのないこいつとの日々が幸せで、辛いだなんて、こいつは知らないだろう。
 今日も明日も明後日も。その先も。こいつと過ごしているだろうか。…たぶん、もう少しでこいつから離れるんだろうなぁ。
笑顔と太陽が眩しくて目を細めた。
 あと、二週間でこっちを出ていく。こいつから離れるためだけに遠くへ行くと決めたんだ。まだ、別れの言葉を言えてないけれど、こっちから出る前に言えたらいい。もしかしたら、言えないかもしれないけど。
 こいつから声をかけられなければ、僕の存在は石ころ同然で、認識すらされなかったかもしれない。
 それなのに、こいつに僕のホントの気持ちを伝えたことなんて、数えるくらいしかないな。
 いつも隣にいるのに「実はあの子が好きなんだ」とか言えていなかったな。
 「あの言葉でお前が好きになったんだ」とかも。
 一緒に居たいんだとかほざいている割に自分のことを話していない。こいつのことも全部わかってる訳じゃない。なにも、わからないことだらけなんだ。
 それでも一緒に居たいとか、自分勝手だろうか。
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