Distorted revenge
川津は私と同じ吹奏楽部の中音パートの
リーダーを努めている。
ちなみに私も中音である。
先日の件を知るまでは仲がよい
部活仲間であったが、今となっては
一緒の空気すら吸いたくない
邪悪な存在である。正直目障りだ。
だからといってあからさまに
嫌悪感を出してはいけない。
復讐を察知されるかもしれないからだ。
川津は部活内で人気者であるため、
誰かに相談したら
内部から流出する可能性があるため
1人で任務を遂行しなくてはならない。
まあ大勢でわちゃわちゃするよりかは
1人の方が捗るだろう。
復讐するといえども、まだ具体的な考えは
決まっておらず、途方に暮れていた。
じっくり隙を見計らっていこう。
そう考えて、日々の部活を過ごしていった。
2週間ほど経ったであろうか。
1つの有力な情報を得た。とあるうちの吹奏楽部の女子が
私に相談をしてきたのであった。
村松瑞姫。トランペットを吹いている
同級生である。
彼女とは幼稚園からの付き合いだ。
いつも大和撫子の如く静かな彼女が
少ししんみりした顔でやってきた。
どうしたのだろうかと聞いてみた。
すると驚くべき事を明かされた。
「聞いてよ果奈恵、私ね付き合ってたんだけど」
すまん、知らなかった。
「振られちゃったの。」
おぉ、私と仲間ではないか。
「でもね、変なの。」
何がだ。主語を教えてくれ。
「知りたい?」
内容によっては知りたい。
「彼がね、私を振るときに、理解しがたい事を言ってきたの。」
ん?何か私と似てないか?
「別れるとき、ごめんね、瑞姫。
って言ってきたの。」
どこかで聞いたことある話だな。
もう少し聞いてみるか。
「それでね、そのあと暫くしてから
本人に聞いたら、」
うん。聞いたら?
「川津君が裏にいたの!」
はい。有罪ですね。
「ねぇ、果奈恵!どう思う?」
逆に聞きたいのだが。
「瑞姫はどう思ったの?」
「もちろん許さないし、復讐したいと思うよ。」
幼なじみだと思考回路も似てくるのか。
もう少し話させてみるか。
「そっか。具体的に川津が何したの?」
「川津君がね、根も葉もない嘘を周りに
広めてたの。」
「どんな嘘?」
多分答えは想像できるものだ。
「私が二股掛けてるって言ってきたの。」
うん知ってる。
「ほんとに私二股掛けてなんか無いからね?」
「そんな嘘信じてないから大丈夫だよ。」
だって私も被害者ですから。
余談ではあるが、瑞姫はとても男子から
人気を得ている人物の1人だ。
彼女の株が下がってしまったことは、
許すべからざる事である。
それはさておき、瑞姫も復讐したいそうだ。
私も復讐をしたい。つまり私達は
同じ陣営なのである。
瑞姫が実際に復讐したいかどうかは
分からないが、上手くやれば瑞姫を
こちらの陣営に取り込めるかもしれない。
単独で復讐を川津に仕掛けると
返り討ちにされる可能性かあるが、
2人ならその可能性も減るし、
復讐の手段の幅も広くなる。
瑞姫を陣営に取り込むことで逆に
悪いことはあるだろうか。無いに決まってる。
さて、どうやって取り込もうか。
とりあえず私も話してみるか。
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