未来の私へ
「1年で帰ってくるから。そしたら・・。」

仕事で海外へ行く事になった彼、木嶋(きじま) 智史(さとし)は、私にそう言い残して遠い地へ旅立った。私はその言葉を信じ、1年間ひたすら彼との再会を待ちわびた。

遠距離恋愛1年目、やっと彼が帰ってくる・・と思いきや海外赴任が延長したと連絡有り。仕事だから仕方ない、私は自分にそう言い聞かせる。

遠距離恋愛2年目、まだ日本に帰れそうにないらしい。大手企業に勤める彼の仕事の忙しさは理解している。彼と知り合ったのも仕事を通じてだった。私の勤める会社と彼の勤める企業は取引先の関係にあり、私は彼の仕事へ取り組む姿勢と情熱に惹かれ付き合いが始まった。付き合いだして楽しかった事を思い出しながら、私は彼の帰りを待つ。

遠距離恋愛3年目、今現在だ。仕事が忙しいのか徐々に連絡の回数も減り、私の中に迷いが出始めていた。

『私はこのまま彼を待ち続けて良いの?』

倉本(くらもと) 紗香(さやか)29歳。部屋に置いてある3年前に撮った彼とのツーショット写真の入った写真立てを手に取り、大きなため息をついた。笑顔で彼の隣にいる私、何て幸せそうなんだ。

写真立てを元に戻すと、私はベッドに転がり手の甲で目元を隠し色々考えないようにした。
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