未来の私へ

「何、強制なの？」

取り敢えず私も自分の席に座り、PCを立ち上げメールの確認を行い仕事に入る。

「よし、今日の仕事終わり。」

時刻は19時を過ぎていた。周りを見ると、金曜日ということもありみんな早々と退社していた。私も帰る準備をして部署を出る。

「あっ、主任お疲れ様です。」

ドアを出ると、何故か池上君が居た。

「お疲れ様って・・どうしたの池上君。帰ったんじゃ？」

「やだなぁ、仕事が終わったら飲みに行くって言ったじゃないですか。さっ、行きましょう。みんなはもう先に店行ってますよ。」

「ずっとココで待ってたの？声かけてくれたら良かったのに。」

「仕事の邪魔しちゃいけないと思って。それより主任ってば仕事のし過ぎ。身体壊さないようにして下さいね。」

「ふふ、気をつけるわ。」

それから私は池上君と一緒に飲み会をしている店へ向かった。正直、飲み会の事はすっかり忘れていた。でも帰ってもどうせ1人きりだし、たまには飲むのもいいか。そう思いながら飲屋街を歩く。

この時の私は、軽い気持ちで参加したこの飲み会で私の人生が大きく変わるとは微塵にも思っていなかった。

「ここです。」

着いたのは活気溢れる居酒屋。中に入ると既にみんな飲み始めていた。

「あ～主任、待ってましたよ。早くこっちこっち～。」

同じ部署の女の子達が私を手招きしている。

「俺は～？」

「え～どうでもいいし。」

池上君達の会話を聞きながら私は靴を脱ぎ座敷に上がり、みんなに言われるがまま真ん中の席に座る。

「じゃあ改めて乾杯。」

みんなでビール片手に乾杯する。しばらくたわいのない話をしていたが、女子達が急に話を変えてきた。

「主任の彼氏ってどんな人ですかぁ？」

みんなの視線が一斉に私の方を向く。

「どんなって・・普通の人よ。」

私はそう言って持っているビールをぐいっと飲む。

「普段、どこでデートしてるんですか？」

女子達の質問がグイグイくる。みんな面白がってるなと思いながらも真面目に答える。

「彼は今、海外赴任中なの。もう3年会ってないわ。」

「えー、遠距離恋愛ですかぁ。なんか素敵ですね。じゃあ彼氏さん帰ってきたら結婚とか？」

「さぁ・・どうかなぁ。」

女子トークについていけず、取り敢えずニコッと笑い話を誤魔化した。