未来の私へ
それから話題も変わり楽しく飲む事2時間。一次会終了っとみんなで店を出る。

「じゃあ私はここで帰るわ。みんなお疲れ様。」

みんなは二次会の話をしていたが、私は先に帰る事にした。

「え~、帰っちゃうんですか?また飲みましょうね。お疲れ様でした。」

みんなに手を振り私は歩き出す。飲み過ぎたのか歩くのも怠かったが、頑張って駅まで歩いた。ホームに着き椅子に座ると、一気に酔いが回ってきた。

「大丈夫ですか?」

顔を上げると、池上君が私の前に立っている。そしてペットボトルの水を差し出してきた。私はペットボトルを受け取りゴクゴク飲んだ。

「ふぅ、ありがとう。」

「いえいえ。」

そう言って池上君は私の横に座った。

「池上君、二次会は行かないの?」

「酔った女性を1人で帰らせるなんて、紳士な僕には出来ません。家まで送らせて下さい。」

大丈夫よって言おうとしたが、私は池上君に送ってもらう事にした。久しぶりに女性扱いされたのが嬉しかったのだ。

それから電車に乗り、最寄りの駅で降りる。

「駅から割と近いしここで大丈夫よ。」

「夜道は危ないから家まで送りますよ。」

いつもはよく喋る池上君だが、今は沈黙が続きながらただ並んで歩いた。静かだなっと思い、ふと池上君の方を見てみる。私の視線に気づいたのかパッと反対の方を向き私と視線を外してきた。

「こっち見ちゃダメですよ。俺は今、(おのれ)の理性と戦ってますから。」

「理性?」

池上君の言ってる意味が分からず、思わず聞き返す。 その時、私は酔いのせいか足元がフラつき転びそうになるが、池上君が咄嗟(とっさ)に抱き寄せてくれたので最悪の事態は免れた。

「ご、ごめんなさい。」

お礼を言って元に戻ろうとするが、池上君は私をぎゅっと抱きしめている。

「池上・・君?」

「もう少し・・もう少しだけ・・・このままでいいですか?」

私を抱きしめたまま耳元でそっと(ささや)いてきた。

お酒のせい・・

これはお酒のせいだと自分に言い聞かせ、池上君の胸の中で静かに頷いた。
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