未来の私へ

日曜日の夜 ーー

今日は3年ぶりに彼が帰ってくる。正直まだ実感がない。彼に再会した時、私にはどんな感情が現れるのだろうか。

待ち合わせ場所の高級ホテルの中にある綺麗な夜景が見えると評判のレストランに着いた。

「紗香。」

窓側の特等席に彼は座っていた。私を見つけると手を上げて私を呼んだ。久しぶりに見る彼はまた一段と大人の雰囲気を醸し出している。

「ごめん、待った？」

私は彼の前に座る。すると彼は段取り良く店員を呼び料理とワインを注文した。

「乾杯。」

ワインで乾杯すると、しばらく海外での話や私の仕事の話をした。

「一時帰国って事は、また海外へ行くの？」

「あぁ。またしばらくは海外生活だな。でも、今度海外へ行く時は紗香も一緒だ。」

「えっ？」

「紗香も一緒に俺に着いて来て欲しいんだ。・・・結婚しよう。」

結婚…

私が待ち続けた言葉…

その言葉を彼の口から聞いた時、私は今の自分の気持ちに気付いた。

「智史さん、私…。」

月曜日 ーー

私はいつも通り会社へ行きいつものように仕事をする。もちろん池上君とも顔を合わせたが、彼もいつも通りだった。

「私、外に出てくるから、何かあったら携帯に電話して。」

部署内にいる人達にそう言い残して、私は外に出る。用事があるわけじゃない。所謂(いわゆる)サボりだ。

会社から少し離れた公園のベンチに腰掛ける。青く澄み渡った青空を見上げながら、しばらくボーっとした。

「主任？こんなところで何してるんですか？」

営業帰りの池上君が私を見つけ話しかけてきた。

「サボり中。みんなには内緒にしてね。」

「サボりって主任が？珍しいですね。昨日、彼氏と何かあったんですか？」

池上君は心配そうな顔をして私の横に座る。こんな事、言うべきではないと思いながらも私は笑顔で池上君に言った。

「昨日、プロポーズされちゃった。」

「やっぱり…それはおめでとうございます。」

「ありがとう。…でも断っちゃった。29歳、勿体ない事したかなぁ。」

「何で！？何で断っちゃったんですか？」

池上君は凄い形相で私の肩を両手で掴んできた。