ママですが、極上御曹司に娶られました
プロローグ
腕の中にある小さな命。
あたたかくてやわらかくて懐かしい匂いのするこの子は、私がずっと待っていた宝物。
この先、私はたったひとりのために生きていく。
この子を愛し、大人になるまで守り抜く。私の人生はそのためにあるし、私はこの子に出会うために生まれてきたのだ。
「新(あらた)」
病室から近くの公園が見えた。終わりかけの紅葉。きらきらとした朝日の下、舞う枯れ葉が美しい。秋の終わりの美しく晴れた朝、私は息子を産んだ。
父親はいない。心の奥に愛しい面影はあるけれど、それだけのこと。もう触れ合うことも、微笑み合うこともない。あのあたたかな眼差しを過去に置いて、私はここに来た。
この子は私ひとりの子ども。
だから、私は自分の命に代えてもこの子の未来を守る。
「ママのところに来てくれてありがとう」
どんな困難が待ち受けていてもいい。この子となら生きていける。勇気が湧く。
「私をママにしてくれてありがとう」
私は腕の中の息子に頬ずりした。
「ママが見えなかったものをたくさん見て、幸せになってね」
息子は丸くて澄んだ眼で、じいっと私を見つめていた。
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