ママですが、極上御曹司に娶られました
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「業務提携ですか?」
その日、私は駅前店での勤務を終え、十五時頃にオフィスに戻ってきた。すると、社長が言うのだ。
「そう、訪問型の介護サービスを提供している『爽の里』って会社が、減塩や軟飯に対応できる弁当を探していてね。アケボノごはんに白羽の矢が立ったってわけ」
塩谷社長は六十代。この会社の二代目だ。温厚な人だけど、それだけじゃない。アケボノごはんが急成長したのは彼のパワーにほかならない。
「工場のキャパ的に厳しくないですか?」
「現在の試算だと、レーンを増やすだけでどうにか対応できそうだよ。でも、人は増やさないといけないなあ」
社長は喜々としている。大きな仕事のようだ。
「桐枝さん、このプロジェクトに入ってくれないかな。営業担当として」
「私がですか?」
「基本は僕が直接担当するけれど、資料を作ったりプレゼンしたりできるサポート役が欲しいんだよね。工場長とメニュー策定してくれる管理栄養士の長田さんも参加するから」
工場長は社長の息子さんだ。栄養士の長田さんとは日頃からやりとりも多い。
社長自ら手掛けるのだから、大きなプロジェクトになるだろうことは間違いない。契約社員で、残業もできない私に務まるだろうか。
「桐枝さんにはこれからもがんばってほしいから、大きな仕事を経験してほしいんだよね。極端に遅くなって新くんのお迎えに障るとかはないようにするから」
「そんな、ご配慮まで」
「どうかな?」
そこまで熱心に言ってもらったら、私だってがんばりたい。子どもを産んでから、ずっと新中心の生活をしてきた。
しかし、その前に私は三年、脇目もふらずに仕事してきた時代がある。だから、大きな案件の一員にしてもらえるというのはうれしかった。