ママですが、極上御曹司に娶られました
 新はやんちゃだ。仲良しの子も多いけれど、喧嘩になると引かないし腕っ節が強いので、相手が痛い目を見ることも多々ある。

「新」

 私はかがみ込んで新の栗色の瞳をまっすぐに見つめる。

「理由はともかく、健太郎くんを引っ掻くのはよくないよね」
「でもあいつが先だよ!」
「やられたらやり返すのはなし!」

 私がピシッと言うと新は黙った。唇をきゅっと結び、小さな額に皺を寄せている。彼なりにいろいろな感情と闘っているのだろう。

「仲直りはしたの?」
「した!」

 新は言うなり、くるんと踵を返し健太郎くんのところへ走っていった。
 そのままぎゅーっと健太郎くんを抱きしめるものだから、健太郎くんは困っている。しかし、子どもというのは素直だ。すぐにふたりでこちょこちょくすぐり合戦を始めてしまった。

「ご心配をおかけしまして申し訳ありません」

 鈴元先生が再び頭を下げて、私も会釈した。健太郎くんのお母さんの携帯は知っているし、今夜一応謝りの連絡を入れておこう。
 元気が有り余っている新。再来年は小学生だ。
 この先どれだけこんなことがあるだろうと思うと、ため息をつきつつ苦笑いもしてしまう。喧嘩はともかく、元気があるのはうれしいことなのだ。
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