ママですが、極上御曹司に娶られました
 三人で食卓を囲んだあと、栄司が新とお風呂に入ってくれた。
 私はあと片付けと栄司に持たせる朝食用のおにぎりを作る。
 新はお風呂を終えるともう眠そうだ。健康優良児なのか、二十時には眠くなり朝は六時に起き出す子なのだ。眠くてグズられることはまずないので、そこは本当にありがたい。休みの日も平等に六時に起こされてしまうのだけれど。
 新は頭を乾かしてもらっているうちに栄司の膝で眠ってしまった。栄司がその小さな身体を布団に運んでくれた。

「姉ちゃん、お疲れ。俺もう帰るからな」
「うん、いろいろありがと」
「車使うような買い物があるときは言えよ。会社で貸してくれるからさ」

 栄司の勤め先は個人経営の小さな建設会社だけどアットホームで、社長は栄司を実の息子のようにかわいがってくれている。高卒で大工見習いに入った栄司を、自分の会社に来てくれと引き抜いたのも社長。
 ひとりで子育てをしている私のことも気にかけてくれ、いろいろと気を配ってくれる。本当にありがたいことだ。

「栄司、あんまりうちのことばっかりかまいすぎちゃ駄目。自分のことをやらなきゃ。今、彼女はいるの?」
「はいはい、そういうのは、姉ちゃんは気にしなくていいから」

 栄司はヘルメットをかぶると、ブルルンとエンジン音を響かせ行ってしまった。弟というものは、存外自分のことは話してくれないものだ。それとも、新も年頃になればあんな感じになってしまうのだろうか。まだ想像もつかない。
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