基準値きみのキングダム
「あんまり……上手くはいかなかった、気がする」
「そ? 初対面だし、それくらいが普通じゃねえ?」
「そうかな。なんだか、別世界みを感じちゃった……んだけど」
「ははは、別世界みってなんだよ。それは杏奈が勝手に設定つけてるだけじゃん? 実際、同じ空間にいるんだし」
私が気にしていることなんて、なんでもないよって言わんばかり笑い飛ばすから。
また、機会があったなら、今度はもうちょっとちゃんと話せるかもしれないと思えてくる。
そのためには。
「……最後の方、近衛くんと話してた女の子の名前って、なんて言うんだったっけ」
「えー、椋と話してた……ああ、戸田かな」
「じゃあ、安曇さんと一緒にいた男の子ふたりは?」
「小塚と水谷。髪色が派手な方が小塚な」
ふむ、と顔と名前をパズルのように頭のなかで合わせていく。
いたって真剣な私の横顔に、深見くんは「なに、復習してんの?」と首を傾げた。
「うん」