基準値きみのキングダム
(6): 眠り姫に惚れ薬
♡
𓐍
𓈒
「ん゛んっ、っう、けほっ」
あー……、これは、やってしまった。
完全に、やっちゃったな。
「咳やば。体温は?」
「……今、測ってるよ」
ちょうどそのタイミングでピピッと電子音が響く。
自分で確認するより先に、ひょいと奈央に体温計を奪われてしまった。
奈央ってば、ついさっきまでパジャマ姿だったはずなのに、いつの間にか学ランに着替えている。
そういえば入学するときには、大きめの制服を買ったはずなのに、もう袖がぴったりの位置にあるなんて。
ほんと、おっきくなったなぁ。
気づけば私の背を追い越して、見下ろされることにももう慣れて……なんて、感慨にふけっていると。
「39.2度」
奈央の呆れた視線が落ちてくる。
「はあ」と盛大なため息もセット。