基準値きみのキングダム



「俺が気づかなかったら、そのまま学校行ってた。姉ちゃんは、絶対」




既に制服に着替えていた私にジトッとした視線を向けた奈央に、心のなかで『だって、熱があるなんて知らなかったんだもん』と言い訳する。




「とりあえず、姉ちゃんは学校に電話。俺と京香が学校行ってる間は、部屋で大人しく寝てて」

「えっ」

「えっ、じゃないだろ。ほらさっさとする」

「待って、まだお弁当作りかけ────」

「俺がやるから。ほら病人はあっち」




顎でリビングから追い出されて、自分の部屋に戻る。


奈央に促されるまま、学校に欠席連絡を入れた。


電話を切ったと同時に、部屋に奈央が押し入ってきて、着替えのスウェットがぽーんと飛んでくる。


それから、救急箱のなかから取ってきてくれたのか、風邪薬と、水の入ったコップと。



「薬飲んで寝る。それでも熱下がらなかったら病院行こ」

「……うん」

「京香の迎えは俺が行くから。任せて」

「……うん、ありがとう」

「何か食べたいものある? 帰りに買ってくるけど」

「大丈夫だよ、私、何でも食べられるから。冷蔵庫のなかにまだ色々残ってるし」




週末に作り置きしておいてよかった、京香と奈央の夕ごはんの分もギリギリだけど足りると思うし……とほっとしていると、奈央は眉を吊り上げる。




< 110 / 262 >

この作品をシェア

pagetop