基準値きみのキングダム
知ってる、と言い切った俺に奈央は目を見開いた。
それから俺をまじまじと見つめて、すべて悟ったように少し笑う。
「姉ちゃんのこと、好きなんですね」
弟のが、よっぽど察しいいな。
ふ、と口元が緩んだ。
「ばれたか。杏奈には内緒にしといてよ」
小指を差し出すと、奈央は「わかりました」と自らの指を絡める。
男の約束がたった今、交わされた。
別に、隠しておく必要はないけれど、どうせ伝えるなら自分の口でがいい。
弟とは正反対で鈍すぎる彼女が、俺の気持ちを知ったときにどういう反応をするのか、この目で見たい。
そう思うほどには。
好きなんだよな。
目の前のこの子に、森下杏奈に、惚れてる。
じゃなきゃ、わざわざこんな足繁く通わねえよ、家にまで。