基準値きみのキングダム
「何してんの? 次、ホームルームだけど」
「へっ」
「授業変更。あー、杏奈ちゃん休んでたから、聞いてないのか」
「初耳……」
そっか、学校を休むとこんな風に浦島太郎みたくなることもあるんだ。
ひとりだけ移動教室だと思っていたのは、ちょっと恥ずかしい。
慌てて化学の教科書を机にしまって、着席した。
でも、この時期にホームルームって、何をするんだろう。
近衛くんにちらりと視線を向けると、それに気づいた近衛くんは
「聞きたいことあるなら言えばいいのに。杏奈ちゃんってよくわかんないとこで謙虚だよなー」
と頬杖をついたまま目を細めた。
それから私の疑問に答えてくれる。
「文化祭について色々決めるってさ」
「文化祭?」
「そ。もうそんな時期らしいねー。俺ら3年は最後の文化祭だし、気合い入れて話し合うんじゃない?」
想像しただけでダルいわー、と近衛くんは机に突っ伏して、ちょうどそのタイミングで授業開始のチャイムが鳴った。