基準値きみのキングダム



「じゃー、次。今年も例年通り、2日目に服飾部主催のファッションショーがあります。……ってなわけで、男ひとり女ひとり、俺らのクラスからも出なきゃなんねえ、です」




中辻くんは、丁寧語とタメ口が入り交じった口調で説明を進めて、それからわしわしと困ったように頭を掻きながら。





「えーと、立候補、いたら、挙手!」




誰の手も挙がらない。


しーんと静まり返った教室、さっきまでクラスの出し物であれだけ白熱した話し合いが繰り広げられていたのが、嘘みたいだ。




なるほど、今日のホームルームの本題は、ここかららしい。


文化祭の話し合いのためだからって、化学の授業を1時間まるまるホームルームに変える必要あるのかなってちょっと疑問だったけど、これなら頷ける。



……というのも。





「出たよー、“実質ミスコン” 」





頬杖をついたまま眼鏡の奥の瞳を少し細めて呟いた近衛くんの声を、私の耳は器用にひろった。





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