基準値きみのキングダム
(8): 灰かぶりがドレスを着ても
♡
𓐍
𓈒
「わあ、森下さんのお弁当、今日もかわいい〜!」
安曇さんの感嘆の声に、どれどれ、とみんなが集まって私の手元を覗き込んでくる。
恥ずかしくなって、お弁当の蓋を閉じると「なんで隠しちゃうの」と安曇さんがふてくされた。
「これは京香の……、妹のお弁当の練習をしてたら、楽しくなっちゃって」
お花の形にくりぬいたにんじんに、くまの形に盛りつけたごはん。
京香の喜ぶ姿がかわいくてキャラ弁に挑戦してみたら、案外、私の方がのめりこんでしまって、最近はレパートリーを増やそうと研究中なのだ。
だけど、高校生にもなって、このお弁当はファンシーすぎたかもしれない、と思っていると。
「なんで? いいじゃん、かわいいは正義だよ。私なんて、毎日コンビニ飯で彩りもあったもんじゃないんだから」