基準値きみのキングダム



「まあ、まだまだ分厚いけど。まだまだ、硬い殻かぶってるなって思わなくもないけど……最初よりはマシ。表情も柔らかくなった気がするし。それって、なにか、きっかけとかあるの?」





興味本位、といった感じで安曇さんが首を傾げる。



自分の変化には自分じゃなかなか気づけない。

首をひねって考える。



きっかけ。

きっかけ……が、あると、したら。





近衛くんと他愛ない話で盛り上がっている、その人にちらりと視線を送る。


アッシュブラウンの髪、色素の薄い瞳、誰もが羨む “王子様” 。



そのとき、プレハブの扉がガチャリと開いて。





「深見、いる?」

「おー、なに?」

「深見に用あるって、2年の女子が教室まで来たんだけど、お前いなかったから呼びに来た」

「2年? 誰?」






< 161 / 262 >

この作品をシェア

pagetop