基準値きみのキングダム
ギラギラと照りつける夏の日差し。
その下で、今、深見くんは、後輩の女の子から気持ちを打ち明けられているのかな。
「好き」って。
思わずきゅっと手のひらを握りしめる。
と、同時に誰かがすくっと立ち上がった。
「美沙? どこ行くの」
安曇さんの問いかけにも答えず、上林さんは小走りに防音室から出ていってしまう。
それは、まるで、さっき出ていったばかりの深見くんを追うように。
「あー、あれは恭介んとこ行ったな」
「美沙ちゃんも健気だよねー」
ベースのチューニングをしながら、近衛くんが感心したように呟く。
他のみんなも、頷いて同調した。
「俺的には、美沙と恭介はいつか付き合うんじゃね? って思ってんだけど」