基準値きみのキングダム
「美沙の方はだだ漏れだからな。あとは深見次第」
「それで思い出したんだけどさ。知ってる? 文化祭のファッションショーあるじゃん。あれ、グランプリとった男女でカップル成立しがちってやつ」
「聞いたことあるわ。そしたら、深見も美沙も、あいつらグランプリほぼ確だし……案外それきっかけで付き合っちゃうとかあんじゃね?」
おお、と場が盛り上がる。
そこにあえて水をさしたのは、安曇さんだった。
「でも、美沙って深見にふられてるよ。たしか、去年とか」
「……っ、え」
思わず声が漏れる。
ふられてる?
上林さんが、深見くんに?
あの、上林さんが?
それは、私にとってまったく寝耳に水だった。
どろりとまた心が黒いものに侵食されるのがわかる。
「美沙レベルで無理なら、誰がいけんだよって話」
誰かがぼそっと呟いた言葉が、とどめに、私の心をぐさりと刺した。