基準値きみのキングダム



𓐍
𓈒




「あ、いた、森下」




お昼ご飯を食べ終えて、“コスプレ写真館” の準備で衣装や段ボール、画材でしっちゃかめっちゃかになっている教室に戻ってきたら、文化祭実行委員の中辻くんに声をかけられた。




「さっき服飾部の内海さん?って子から連絡もらって。なんか、衣装ができたから、このあと試着しにきてほしいってさ」




中辻くんが、ちょいちょい、と教室の真ん中に向かって手招きする。




「深見ー」




呼ばれた深見くんがきょとんとした顔でこちらにやってくる。




深見くん、もう教室に戻ってきてたんだ。

中庭に呼ばれたっきり、あのあと、結局プレハブには帰ってこなかったから……。





「てことで、今からふたりで行ってきて。場所は家庭科室なー」





中辻くんに見送られて、廊下に出る。

クーラーの効いた教室から出ると、空気が一気にむわっとして、夏の匂いがした。





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