基準値きみのキングダム



あたりまえのように歩幅を合わせて隣を歩く深見くんをちらりと見上げると、暑そうにシャツの胸元をぱたぱたしていて、でもその横顔はいつも通りだった。




何も変わらない、いつもと同じ顔。

ほんとうに、なにも、変わってないのかな。




……なんて、答えたんだろう。

後輩の女の子から、なんて言われて、なんて返したの。

どんな子だったの。




「そういえば、ファッションショーの出演者って景品もらえるらしいよ。去年は映画館の回数券で、その前はネズミーランドのチケットだったって。今年はなんだろーな」

「うん……」





深見くんが話しかけてくれるけれど、上の空で、頷くことが精いっぱいだった。




気になることばかり。

でも……聞ける、わけがない。




頭のなかがいっぱいいっぱいの私に、深見くんは不思議そうな顔をした。





「杏奈、なんかあった?」





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