基準値きみのキングダム


「え────……あ」




戸惑う私の前を、人影がさっと通る。

たった一瞬で目を引く、その女の子は、上林さんだった。



一足先にファッションショーの試着を終えたばかりなのか、リボンやフリルがたっぷりあしらわれて膝上の裾がバルーン型になっている、水色のワンピースに身を包んでいる。




「……っ、かわいい」




足を止めて、ぽつりと思わず口にしてしまうほど。



私が憧れてやまなくて、羨ましいくらいの “女の子” がそこにいた。甘々な衣装を違和感なく完ぺきに着こなす姿に、見惚れてしまう。

実はプリンセスなんだって言われても、信じちゃうよ。




「かわいい、って急になに……。あー、あれ、美沙か」





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