基準値きみのキングダム


そうなんだ。



納得すると同時に、ドレスが重さでずり落ちかけた。

危ない、このままじゃ、そのうち脱げちゃう。



でも、内海さんもいないし、この場に頼れる人は深見くんしかいなくて。


一瞬ためらったのち、恥を忍んで口を開いた。





「っ、あの、深見くん。ホック、留めて、もらってもいい?」

「ホック?」

「その、背中の。自分じゃどうしても届かなくって」




間違っても脱げちゃうことがないように、胸の前で手をクロスにしてドレスを押さえていると、そんな私を見て、ぱちぱちと瞬きした深見くんは。




「……いいけど。杏奈は逆にいいの?」

「え。何が?」

「んーや、気にならないならいい」





立ち上がった深見くんが、私の前までやってくる。





「後ろ向いて」

「……うん」





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