基準値きみのキングダム
「な……っ、なんで?」
撮ったのは、私の写真、だよね。
訳がわからない、と困惑する私に、深見くんは「あー……」とまた声を漏らして、天井を仰いだ。
それから。
「もう、ごまかすのも限界」
深見くんは、私をじっと見下ろして、それから妙に真剣な顔をした。
唇をきゅっと真一文字に結んでから、はっきりと動かして文字を紡ぐ。
「好きだ」
「…………へっ?」
「好き、なんだけど」
待って、何もわからない。
頭が全然追いつかない。
深見くんが「好き」って言った。
言ったけど……、深見くんが好きなのは、なに?
目を白黒させる私に痺れを切らしたのか、深見くんがずいと1歩近づいて、また言葉を重ねる。
「ちゃんと、聞こえてる?」
「な、にが……」
「好きなんだよ。杏奈のことが」