基準値きみのキングダム
♡
𓐍
𓈒
昇降口までたどり着いて、きょろきょろと左右を────深見くんがいないかを、確認して、よし、とローファーに手をかけたら。
「杏奈」
「……っ!」
びくっと大袈裟に肩が跳ねた。
だって、いないって思っていたから。
ちゃんと、確認したのに、どうして。
「待ち伏せしてた。こうでもしねーと、杏奈捕まえらんないから」
うろたえる私を逃がさないとでもいうように、深見くんはロッカーに手をついて、進行方向を塞いだ。
思わず回れ右しかけたけれど、もう反対側もすかさず腕でブロックされてしまう。
背中にはロッカー、両側には深見くんの腕。
閉じこめられてしまって、もう逃れられない。