基準値きみのキングダム


「なんで受け取らないの? なんで、杏奈が考えてることを正直に話さないの? せっかく、好きになった人が自分のこと好きって言ってくれるなんて奇跡が起きてるのに」




あのね、想像もつかないかもしれないけど、と上林さんが続ける。




「告白するって、すごい勇気が要るの。ほんとうの気持ち伝えるのって怖いの。その怖さを乗り越えてきた人に向き合わないなんて、最低だから」




ハッとした。


そうだ、ほんとうの気持ちを伝える怖さを、私はよく知っている。

素直に心を晒す難しさをいやというほど知っている。



その高いハードルを、深見くんは何度も飛び越えて来てくれた。

『好き』ってまっすぐ、ぶつけに来てくれた。




なのに、私は、それを突っぱねるばかりで。

どうしよう、たしかに私は最低だ。




今さらな後悔がどっと押し寄せてきて黙りこむと、上林さんは深く息をついて、それから私を鋭く意志のこもった瞳で見つめた。





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